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BL短歌の弾み方 [地下室のアーカイブス(WEBLOG)]より


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BL短歌誌「共有結晶」が主催して、2013年2月7日(木) から2月14日(木) まで、「バレンタインBL短歌祭り」を行っている。私自身、BL短歌を詠むことで、大学時代に親しんだ短歌との接点ができて、昨年からたくさんの歌を詠んだ。そのため、BL短歌にとても愛着があり、今回、Nowtucker_O.氏による「BL短歌」への指摘(http://togetter.com/li/452748)が行われたことに対して、応答したいと思う。
 
以前にも本ブログで紹介したが、歌人の山田航氏は、ご自身のブログ「トナカイ語研究日誌」の中で、「美少年同士の耽美な恋愛を短歌詩形の中に積極的に持ち込」んだ歌人・松野志保氏の名前をあげながら、「やおい」に影響をうけた短歌の魅力について、次のように述べている。
 

しかし松野の歌は決して閉じた美学に支配された世界ではない。「やおい」の美学もまた国家や社会のなかに囚われざるをえないという視座をも持っている。パレスチナを舞台にレジスタンス少年二人のドラマを描いたとおぼしき連作「二重夏時間」や「国ひとつ潰えゆく夏」といった表現には、国家的・社会的規範といったものが性的モラルと同様、「美」の前に乗り越えられてゆくべきものなのだという強い批判精神が込められているのである。
山田航氏「現代歌人ファイルその18・松野志保」『トナカイ語研究日誌』
http://d.hatena.ne.jp/yamawata/20090107/1231326050

 
 山田氏が指摘していることを私なりに解釈し直してみるならば、BL短歌とは、国家や社会の中で固定化された、男女という枠組み自体を問い直し、規範的なセクシュアリティや身体を維持しようとする力学そのものへと介入していく意志を持つものと定義できるかもしれない。これについては、私が、フェミニズム批評とクィア批評に影響を受けているため、多くのBL短歌詠みと同じ意見かどうかはわからない。けれども、BL短歌が、「短歌」の「亜流」であるとか、「BL57577」にすぎないという批判があれば、そもそも、何故、「短歌」はこうであるべきという共通認識が出来上がっているのか自体を問う試みがBL短歌であるということができるだろう。
 
  私自身、BL短歌が投げかける問いは、「短歌」がこれまで、ジェンダーやセクシュアリティという問題に対してどのようにとりくんできたのかを問い直す契機になると考えている。そのため、もしも、Nowtucker_O.氏が、「短歌の人間」と「腐女子(Nowtucker_O.氏の言葉でいうと「腐の方々と思われる作者」)」というふわけを行うことで、今はまだ技巧の面でも、「短歌」ではないBL短歌を仮構しようとしているならば、それは逆説的に、ジェンダーやセクシュアリティのあり方への批評性を感受しきれていないことを示してはいないかという疑問が浮かぶのである。
 
Nowtucker_O.氏の議論を追ってみよう。

▼いろいろ教えてもらったので、そろそろBL短歌について批判的に言及していきます。tree_frog_o 2013-02-09 00:14:47
 
▼で、まだ頭冷えてないけど、書いてみる。すでに今夜、学生短歌会の方々が言及なさっている部分と重なるかもしれない。それは許してください。BL短歌について。tree_frog_o 2013-02-09 01:49:42
 
▼BL短歌の主唱者である、たにすさんのツイートを積極的にTLに流したのは私。だから、批判的なことを最初に書く役目は私にある、そう思いました。tree_frog_o 2013-02-09 01:54:59
 
前提として、BL短歌のタグで(腐の方々と思われる作者の作品)をみると、言葉の扱いがじょうず。本読みが多いんでしょうね。ふつうの水準は超えている。tree_frog_o 2013-02-09 01:55:42
 
で、BL短歌のタグで楽しんでいらっしゃることについて、よそからとやかくいうべき筋合いでないことも分かってはいます。ただ、作品を見るに、このままではこの運動自体がいっときの盛り上がりの後にするすると消えてしまうのではないかという危惧を抱いています。tree_frog_o 2013-02-09 01:59:38
 
▼せっかく表現の手段としての短歌を見つけてくださったのに、それは残念なこと。だから、たぶん、気付いていらっしゃらないのじゃないかと思うことを書いてみます。これは、歌会(短歌の合評会)ではよく言われるような内容です。tree_frog_o 2013-02-09 02:01:44
 
BL短歌のタグで流れてくる作品を拝見したところ(見落としも私の勘違いもあるよ)、短歌と呼べるものは一つもありません。BL短歌ではなく、BL57577です。tree_frog_o 2013-02-09 02:03:11
 
▼極端な例をあげます。「この土手にのぼるべからず警視庁」。これは575の形式に収まっていますが、俳句ではありませんね。そのような意味でBL57577。でもね、tree_frog_o 2013-02-09 02:05:28
 
▼それは短歌初心の方には当たり前のことで、短歌の結社誌にはそうした歌がごまんと並んでいます。ただ、(短歌が身近にあって)すぐれた短歌作品に接しているとだんだん骨法が見えてきます。何十年やっても見えない人には見えないけど。tree_frog_o 2013-02-09 02:08:10
 
で、BL短歌のどこが短歌じゃないんだろうと思ってたのさ。そしたら、かつて作品が相当な人気を集めたと聞く腐女子であり、現在は歌に精進している作家が教えてくれたのよ。一首の中ですべてを説明しようとしてるって。tree_frog_o 2013-02-09 02:11:33
 
なるほど。小説と同じことを短歌でやろうとするのは無理ですね。短歌は削る文学。感動の中心が那辺にあるか、自分の中であれも言いたい、これも言いたいと思う、しかしその核心にあるのは何なのか、それをつかまえて一首のおへそにする。tree_frog_o 2013-02-09 02:16:42
 
すべてを詰め込んでしまうと、読者が萌えられないんです。tree_frog_o 2013-02-09 02:19:42
 
▼腐女子は行間を読む力が衆にすぐれていると聞きます。発見をする力。それと、身巡りから詩の題材を探すこととはとても近いものがあるのではないでしょうか。腐における妄想と、歌詠みの作歌過程とに径庭はないだろうと思う。tree_frog_o 2013-02-09 02:22:36
 
▼あとは、それをいかに表現にするか。作品の中で説明をする必要はありません。金魚が泳いだあとの、金魚のしっぽがかき乱した水のゆらぎの中に詩はあります。tree_frog_o 2013-02-09 02:28:23
 
▼そして、捨てて捨てて残ったものを差し出すことが出来るか。玉ねぎをむいていって、もしも何も残らなかったら、それは表現する必要のない、感動というラベルを貼られたギミックです tree_frog_o 2013-02-09 02:30:54
 
でまあ、こういうことを言うと、短歌の人間が何を言っているかということになるでしょう。それは私の言葉足らず。言いたいことの中心は、短歌になっていない、ということではありません。表現としていまだ稚拙だということです。このレベルでは、詩歌はもちろん、小説でもマンガでも通用しない tree_frog_o 2013-02-09 02:33:41
 
▼と、作品をあげずにつらつらもうしました。一首ずつに対する批評をしてこそ、意味があるでしょう。からんさんがたにすさんを歌会に誘っていらっしゃったように思いますが、そうしたことこそ大切だと思います。tree_frog_o 2013-02-09 02:39:59
 
んでもって、ぼくとしては、BL短歌がすぐれた作品を生んでくれることを願っているのです tree_frog_o 2013-02-09 02:45:24
 
金魚を描くことにとらわれていては、金魚の美をこえることはできない tree_frog_o 2013-02-09 03:15:26
Nowtucker_O.氏による「BL短歌」への指摘」をトゥギャりました。

 「一首の中ですべてを説明しようとしてる」ことも、「すべてを詰め込んでしまう」ことも、「金魚を描くことにとらわれてい(る)」ことも、Nowtucker_O.氏ご自身が指摘するように、決して、BL短歌のみに見られる特徴ではないだろう。もちろん、Nowtucker_O.氏の指摘から学ぶことは多くある。しかし、BL短歌を詠む人が磨く「技法」は、「短歌」の長い歴史を自覚しながらも、それとまったく同じであってはならない。「一首のおへそ」にあるものが、ジェンダーやセクシュアリティをめぐる葛藤や愛、憎しみや歓び、そして、そこにあらわれる現在の社会の不均衡なあり方であるならば、歌の形自体も変わっていくはずだからである。
 
 
 もしも、このような比喩が許されるならば、BL短歌を詠む人が探すのは、「紫色の金魚」だといえるのではないか。誰も見たことがない姿で泳ぎ出す、新しい尻尾が乱した水の流れる跡を、BL短歌を詠む人は、現在の言葉の中から手探りしはじめている。今後、Nowtucker_O.氏がいうように、様々な人々によって数多くの歌会や意見の交換が行われ、その中で、この世界にひとつの美しい攪乱が起こればよいと願う。
 
 
岩川ありさ @ari198055

地下室のアーカイブス(WEBLOG) より
http://d.hatena.ne.jp/ari1980/20130209/1360405823